Faylay~しあわせの魔法

「……私が……やった、のか……」

血溜まりの中に転がる抜き身の細い飾剣に、絶望すら感じる。

重い体を引き摺り、這っていって、階段を転がり落ちた。苦しそうに喘ぎながら飾剣に手を伸ばすと、身を起こして、渾身の力を込めて剣を手首に振り落とした。

だが、それは何かに弾かれるように、手首の横に突き刺さる。

どさり、と横に転がりながら、剣を首にあてる。だが、剣の刃が首を掠めることはなかった。磁石の同極が反発しあうように、どうしても首に剣をあてがうことが出来ない。

「死ぬことすら、許されぬのか……」



そうだ。

それが、お前の背負うべき罪。

この星の王として、壊れていく世界を、最期まで見届けるがいい。



どこかで、そんな声が響いた。


カインは剣を持ったまま、腕を投げ出した。

ビチャリと、水音が響く。

誰かの流した、もう冷たくなってしまった命の水に浸り、カインの目尻から温かな涙が伝っていった。

「逃げろ、ローズ……リディアーナ……」