「うらあぁっ!!」

気合い十分な掛け声とともに拳を突き出し、壁を一突きでガラガラと破壊した。

それを唖然として見つめる3人。

「……このように、壁を崩すことも出来ます」

ローズマリーはにこやかに3人を振り返った。


「……うらあっ、って言った」

「……うらあっ、って言った」

「……うらあっ、って言った」


3人の小さな呟きが、見事に重なった。

今まで、春風のような優しい声だったのに。拳を突き出したときに見せた、まるで別人の声と表情に、3人は固まった。

「まあ、何です? 3人して阿呆みたいな顔をしていますよ?」

両手を腰にあててローズマリーは口を尖らす。途端に、たぷん、と豊満な胸が揺れ、そこに思わず目が釘付けになる男2人。

それを見たリディルは、自分のささやかな胸のふくらみに目を落とした。そしてフェイレイに視線を送り、眉を顰める。



「そういえば、聞いたことがあります……」

ヴァンガードが話し出した。

「皇后陛下は、ご結婚される前……ギルドに所属していたって。そして今も、世界一の拳闘士だって」

「……うそ」

フェイレイの脳裏に、恐ろしく強い母、アリアの姿が思い起こされた。

女拳闘士にあまり良い思い出のないフェイレイは、少しだけ顔を引きつらせた……。