ドン……と、微かに腹に響いた重低音に、リディルは顔を上げた。


騎士アレクセイに案内された部屋は、豪華絢爛な造りの上に広く、きっと皇族がこの艦に搭乗したときに用意する部屋なのだろうと思われた。

黄金色の壁や柱、黄金の刺繍の施された真っ赤なカーテン、天井から吊り下げられるシャンデリア、部屋をグルリと取り囲む、白い大理石の螺旋階段。

ここが戦艦の中だと、この部屋にいる間は忘れてしまいそうだ。

アレクセイはここにリディルを案内するとすぐに消えてしまったが、黒いドレスに白いエプロンをした侍女たちが、肌触りの良いソファに座るリディルのすぐ後ろに控えていた。

もともと、知らない人と関わることは好きではなかったリディルだ。

馴染みのない場所で知らない人たちに囲まれ、まったく落ち着くことは出来なかった。

こんな風に周りを囲まれていると、監視されているような気がしてくる。実際、そうなのかもしれないが。

一体、何のために皇都へ連れて行かれるのか、リディルは知らない。

けれども別れ際に見たフェイレイやアリアの表情から、きっと良くないことなのだとは解っていた。

知らずのうちに左小指のシルバーリングを、右手の指でなぞっている。

大丈夫だと、言い聞かせながら。


そんなとき、その重低音は聞こえてきた。

嫌な感じがした。