Faylay~しあわせの魔法

向かってくる拳を、アリアは瞬きもせず見つめていた。──避けられなかった。

だが。

その拳は、眼前でピタリと止まる。

フェイレイの瞳から、ぱたりと、涙が一滴落ちていく。

「……甘い」

アリアはそう言うと、素早く蹴りを繰り出し、フェイレイの側頭に叩き付けた。

ズササササ、とコンクリートの上を滑るように転がっていくフェイレイ。そこにヴァンガードが駆け寄った。

「馬鹿が。手加減するなと言っただろう。その甘さが身を滅ぼすぞ」

口の中を切り、唇から鮮血を滴らせながらフェイレイは起き上がる。

「何かを護るためには、何かを切り捨てなければならん。そのことを思い知れ。中途半端は許さん」

「……嫌だ」

「何?」

「俺は、何も捨てたりしない。今の俺を作ってくれた人達を捨てていったら、俺は俺でなくなるんだ」

「お前は、セルティアを、父や母を、自分すら捨ててリディルを助けに行くのだろう?」

「絶対に、ここに帰ってくる」

フェイレイは立ち上がり、アリアを見つめた。

「リディルを連れて、ここに帰ってくる。……必ず」

ゴウゴウと吹き荒れる風に弄られながら、2人はしばらく見詰め合った。

そして、アリアは溜息をついて闘気を消した。