Faylay~しあわせの魔法

こうなると、動体視力が追いつかない。感覚だけでその全てをギリギリでかわし、最後の一発を掌で受け止めた。


『たとえ勝てそうにない相手でも、負けるかもしれないなどと絶対に思ってはいかん。気持ちで負けたら、そこで終わりだ』


だが、見極めろ。

本当に勝てない相手に出会ったときは、全力で逃げるのだ。

逃げることは、負けることではない。

生き延びて次の機会を狙う。それもまた、戦いのひとつだ。

──昔のアリアの声が、鮮明に思い出される。



アリアと視線がかち合う。

4つの深海色の瞳には、一歩も退けない、互いの想いが映し出されていた。


捕まえた拳が離れ、ひゅっと空気が鳴り、顎に蹴りを入れられた。

一瞬だけ眩暈を起こすも、離れていく足を捕まえ、力任せにグルリと振り回した。そして飛行艇の格納庫目掛けて投げつける。

戦いを見守るヴァンガードとブライアンがハッと息を呑んだ。

アリアの身体は弾丸のように飛ばされていったが、飛行艇の灰色の格納庫に叩きつけられる前にくるりと回転し、まるで地面に降り立つかのように、垂直の壁に着地した。

顔を上げると、フェイレイが地面から飛び上がった。それに応戦しようと、アリアも壁を蹴る。

宙で交差する瞬間に、互いに蹴りを繰り出す。

それは綺麗に交わり、そこから暴風が吹き荒れた。ヴァンガードもブライアンも、腕を掲げて後退する。物凄い圧力だった。