Faylay~しあわせの魔法

地上50メートルのビルの屋上に吹く強風に横から煽られながら、互いに闘気を高めていく。

ふっと短く息を吐き出して、アリアが最初に動いた。

2,3歩で一気に間合いを詰め、フェイレイの顔目掛けて拳を繰り出した。

眼前に迫る拳を前に、フェイレイは思い出す。

昔、母に言われたことを。


『いいか。戦いというものは、最初が肝心だ。最初の一撃、これは必ず避けろ』


シュッ、と空気を切り裂く音が耳元でする。

ギリギリでかわしたアリアの拳は、頬のすぐ横を通り過ぎていった。実際には掠ってはいないのだが、拳の周りを固める鋭い空気により、耳が切れて鮮血が飛び散った。

それを気にすることなく、右手でアリアの腕を押さえ、左手で殴りに行く。

するとアリアはフェイレイに背を向けながら反転し、左足を軸に右足を蹴り上げた。

フェイレイは振り向きもせず、それを左腕で受け止める。


『攻撃をかわしたら、相手の動きをよく見ろ。ただ我武者羅に打っても疲れるだけだからな』


全身の感覚を研ぎ澄まし、次に繰り出された拳をかわし、後ろに跳んで距離を取る。

だがアリアは休む暇を与えない。

すぐに追撃し、目にも留まらぬ速さで拳を連打した。