Faylay~しあわせの魔法

「……分かった。行こう!」

フェイレイは剣の柄を握りなおすと、空中回廊の更に上に見える、黒い戦艦を見上げた。まだ動いている気配はない。まだ、間に合う。

センタービルの屋上にある飛行場には、いくつかの飛行艇が停泊していた。

そのうちの一艘を、飛行士ごと奪わなければならないのだが……。


ゴウゴウと風がうねりをあげる中、発着所の真ん中で腕組みをして立っている赤髪の女性がいた。

傍には長身の秘書官、ブライアンが控えている。

「……母さん」

フェイレイとヴァンガードが立ち止まると、アリアはひとつ溜息をついた。

「まったく、派手に暴れおって」

「修理代は減俸しただけでは済みませんよ」

ブライアンは黒いメモ帳を見ながら言う。

「いいよ、そんなの。俺の貯めたお金、全部使っていいから」

「……本気なのか」

「本気だよ。俺はリディルを助ける」

親子はしばらく、ジッと見詰め合っていた。

上空にある戦艦が、ゴオン、と唸りをあげる。そろそろ飛び立つのかもしれない。時間がなかった。

星府の戦艦のスピードに、飛行艇では追いつけない。

「頼む母さん。行かせてくれ」

「お前を死なすわけにはいかんと言っただろう」