Faylay~しあわせの魔法

「えっ……?」

ヴァンガードも、フェイレイも、驚いてアリアを見た。

「お前の祖父は、リディルの母と親しかったらしい。……リディルは前の皇帝陛下と、町娘との間に生まれた子でな。ずっと皇家とは関係のないところで、母と2人で暮らしていた。それがいきなり戦に巻き込まれたのだ。……可哀想な話だ。お前の祖父もそう思ったんだろう」

アリアはふう、と息をつくと、静かに目を閉じた。


あの日。

10年前の、嵐の日。

セルティア国境沿いにある小さな村の川を流れてきた娘は、皇都から逃がされた皇女殿下だった。

その事実を知ったのは、リディルをギルドの医療施設に運び込み、手当てをしている最中だった。

リディルを拾うほんの数日前に保護したエインズワース一家。その夫婦に、リディルが皇女殿下だと聞かされた。

そして数日後、氾濫の収まった川の河口で、ヴァンガードの祖父は遺体となって発見された。

全身傷だらけだったが、致命傷は背中から胸にかけて大きく開いた刺し傷だった。

彼はリディルを命懸けで護り、そして亡くなったのだ。

「皇家に背いた大罪人として、お前の祖父は殺された。そして、お前たちも狙われていた。大罪人の血を引く一族としてな。……なあ、ヴァンガード。父上は、お前に厳しく接しただろう? 何故だと思う?」

ヴァンガードは首を横に振った。

「お前に死んで欲しくなかったのだ。エインズワースという名でいる限り、星府から狙われ続ける。それから逃げるには、お前を強くしてやらねばならなかった。そして、優しくもしてやれなかった。……今日のような日が来たときのために」