Faylay~しあわせの魔法

何の感情もない冷たい瞳で、騎士の剣はフェイレイの首を狙った。

首筋にひやりと冷たいものを感じ取ったフェイレイは、考えるより先に身体を動かしていた。

左手にある剣を、無我夢中で振り上げる。


「やめて!!」


そこに、リディルの声が飛んだ。

ピタリと、両者の剣が止まる。

そこにいる全員が、息をするのも忘れて2人に見入っていた。

騎士の剣はフェイレイの首にピタリと当てられ、つ、と血が首筋を伝っていった。だが、フェイレイの剣は騎士の胸まで届いていなかった。リディルが止めなければ……完全にやられていた。

「……皇女殿下のお言葉であるならば、従います」

騎士はそう言うと、ひゅっと剣を一振りして腰の鞘に戻した。

それを見て、やっとフェイレイは大きく肩で息を始める。

同じようにやっと息を始めたアリアは、つかつかとフェイレイに近づき、首根っこを捕まえると後ろに投げ捨てた。

「ぐへっ」

妙な声を出して床に転がるフェイレイに、リディルが駆け寄る。

「失礼をいたしました、アレクセイ殿。この者の非礼、平にご容赦願いたい」

深々と頭を下げるアリアに、フェイレイは腹を立てる。

「母さん! なんで!」

「黙れ!」

アリアは低頭しながらフェイレイを怒鳴りつけた。