Faylay~しあわせの魔法

「そう? ホントに大丈夫?」

リディルの気持ちにまったく気付かないらしいフェイレイは、少しだけ心配そうに眉尻を下げた後、屈んでいた身を起こした。

「でも、無理しないで帰ろうか? 明日の夕方までは休めるんだし」

と、手を差し伸べる。

フェイレイの無駄のない均整のとれた身体は、今日の海水浴で少し日焼けし、更に引き締まって見えた。

まだまだ成長段階とはいえ、十分に『男性』だと意識させられてしまい、リディルは目のやり場に困りながら手を取った。

軽く引っ張られて立ち上がり、ニッと微笑むフェイレイを見上げる。

いつの間に、こんな風になったのだろう。

子供の頃は、ただ、傍にいることで安心していたのに。

今は──安心ばかり、していられない。



太陽が少し傾き始め、影が長く伸び始めた海岸通りは、観光客でいっぱいだった。

みんな、南国の衣装や面を扱う土産物屋や、花を売っているワゴンを眺め、海産物の焼ける香ばしい匂いに引き寄せられたり、綺麗なアクセサリーを並べた露天を覗き込みながら歩いている。

「おう、兄ちゃん、兄ちゃん、そこの赤い髪のカッコイイ兄ちゃん!」

人込みの中から、そう声がかかった。

「え、俺?」

「そう、あんただよ、カッコイイ兄ちゃん!」

「いや~、それほどでも~」

照れて頭を掻きながら、声をかけてきた坊主頭にサングラスをかけた露店主に近づく。