Faylay~しあわせの魔法

「2人で何話してんのー?」

やっと海から上がってきたフェイレイは、ブルブルと首を振って赤い髪から雫をまき散らかした。

飛んでくる雫に目を細めながら顔を上げたリディルは、まだほんの少し頬に赤みを残していて。

「……え? 何? まさか! 2人で愛でも語り合ってたのか!?」

「そんなわけないじゃないですか」

フェイレイの勘違いにすかさず突っ込むヴァンガード。

「ヴァンも要注意人物?」

「だから、違いますって」

ヤレヤレと溜息を付きながらヴァンガードは立ち上がる。

「僕、少し疲れたので先に宿に帰ってますよ。後はお二人でどうぞ」

にこりとリディルに笑いかけると、ヴァンガードはお尻についた砂をはらってスタスタと歩いて行ってしまった。

「何だー? ……ヴァンは直射日光にも弱いのか? 指導員としては、もうちょっと鍛えてやんないとかな?」

「……違うと思うよ」

リディルはヴァンガードが気を利かせてくれたのだと解っていたので、何となく気まずい想いで呟いた。

膝を抱えて少し俯き加減でいると、ふっと暗く翳って足の上にパタパタと雫が降ってきた。何だろうと思う間もなく、頬に冷たい手が当てられる。

「リディルものぼせた? 顔赤いけど」

顔を上げれば、至近距離に深海の瞳。

「な、んでも、ない」

パッと顔を逸らし、睫を伏せる。心臓がドキドキしていた。