私と郁美は、買い物した荷物の中から、香取さんの部屋に置く物以外を取り出した。歯ブラシとかスリッパとか、そういう日用品。


「ねえお姉ちゃん、香取さんと何かあったの?」


「別に……」


「嘘。絶対何かあったよ。二人とも帰ってから変だったもん」


「何もないってば……」


「喧嘩したの?」


「してないよ」


「もう、気になるなあ。お姉ちゃんは今が頑張り時なんだよ。分かってる?」


「なにそれ?」


何に対して“頑張り時”なんだろう……


「だから……、香取さんの心は、彼女さんとお姉ちゃんの間で揺れ動いてるんだよ?」


「“彼女さん”って?」


「なんだあ、やっぱりお姉ちゃん、聞いてなかったんだ……。何気にスルーするから、変だと思ったんだよね」