「香取さん」


エレベーターを待ちながら、私は香取さんに話し掛けた。


「ん?」


「今度から、一緒に帰るのは止めた方がいいと思います」


「なんで?」


「みんなの視線が痛いです」


「そんなの気にすんなよ。何もやましい事はしてないんだから」


「でも……」


「渡辺さんは、俺と噂になったら迷惑?」


「そんな事はないです」


しまった。即答しちゃった……


「じゃあ、いいんじゃない?」


「香取さんは迷惑じゃないんですか?」


「全然。俺はそういうのは、気にしないタチだから」