「お帰りなさい」


「ただいま」


「あれ? お姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒? お姉ちゃん、やけに早くない?」


「姉貴はさ、BMWで彼氏に送ってもらったんだぜ」


「ほんとに?」


「嘘に決まってるでしょ?」


「なんだ……」


「いや、彼氏じゃないかもしれないけど、若い男に送られたのは本当だぜ。俺はしっかり見たからな」


「え〜! 誰なの、お姉ちゃん?」


「ただの上司よ」


「上司? ねえ、お兄ちゃん、格好いい人だっ?」


「全然、格好よくねえよ」


「そんな事ない!」


「へえ〜。お姉ちゃん、その人のこと、格好いいと思ってんだあ」


「姉貴、引っ掛かってやんの」


しまった……
もしかして私、涼にはめられた?


「もう止めてよ! 郁美、ご飯あるかなあ?」


「あるよ。今日は早かったから食べて行けるね? イケメン上司の話は、後にしてあげる」


何が“イケメン上司”よ!
後じゃなくて、忘れてよ……