「………」

「どうして二人とも黙ってるの?」


「俺達は、そこへ行くんだ」


「え? どうして?」


「香取さんから招待されたの」


「私は行かないわよ。降ろして。運転手さん、車を停めて!」


「停めないでください。姉を説得しますから」


「お姉ちゃん、黙っててごめんね。ぎりぎりの賭けだから、言えなかったの」


「ぎりぎりの、賭け?」


「香取さんがそう言ったんだ。警察の友人に頼んで藤堂蘭子を逮捕しようとしてるんだ。でも昨日まで、まだ逮捕出来てない。

だから、予定通り香取さんは藤堂蘭子と婚約するかもしれない。でも、ぎりぎりで間に合うかもしれない。だから来てくれと言われたんだ。姉貴を連れて。

会社の人達も呼んだんだろ? それは、みんなに姉貴との事を知らせたいからなんだ」