「ジェイド様が私を助けて下さったのですよね?」
「………そうだ」
「ありがとうございました」
「無事ならそれでいい」
「はい」
このハプニングがきっかけになり、ふたりの距離がほんの少しだけ近付いた瞬間だった。
それから間もなくティーセットを持って来たルーシアはふたりが全身水浸しになっているのを見て驚いていた。
「お前はアリア付きの侍女だろう。何故目を離した?」
「申し訳ございませんでした」
「お待ち下さい。ジェイド様。私が勝手に落ちたのです。ルーシアはお茶の用意をしてくれていたのです。何も悪くはありません。全て私の不注意が招いた事です。罰なら全て私が受けます」
「分かった。アリアの着替えを至急用意しろ。馬車までは俺が連れて行く」
「かしこまりました!直ぐにご用意致します」
馬車へ向かって走り去ったルーシアを見送った後、ジェイドはアリアを横抱きにして歩き始めた。
「ジェイド様。自分で歩けますわ」
「お前は溺れて意識を失いかけてたんだぞ。じっとしていろ」
「はい」
アリアはジェイドの逞しい腕に抱かれながら馬車へ向かった。

