家に押し入った男は声までもが冷たいのであった。
「アリア王女」
「は、はい……」
この時点でもおかしいと思った。
確かにアリアは王女だが今は王妃である。
ジェイドに嫁いでからは王女と呼ばれる事など有り得ない事だ。
皆、“アリア様”“アリア王妃”“王妃様”と呼ぶのだ。
それなのに、この男はアリア王女と呼んだのだ。
アリアはこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいであった。
だが目の前のこの男からは逃げられるとは思わない………
今、キール兄様が帰って来てくれたら助かるかもしれない。
けれど、キール兄様が傷付いてしまうかもしれないわ………
叶う事ならば、この方がここから去ってくれれば…………
誰も傷付かずに済むわ。
けれど、そのような事はないと私も分かっているの………
この方は、きっと私や私の大切な人達を傷付けるわ…………

