アリアはその日も小屋にやって来ていた。
男の怪我の具合はまずまずと言った所だろうか。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はアリアと申します」
「アリア………?」
「ええ」
「………そうか」
男は暫し考え込み、顔を上げてアリアを真っ直ぐ見つめた。
男はいつもアリアと視線を合わせようとはしなかった。
だからアリアは驚くものの目をそらさなかった。
「………リュード」
「………え?」
「俺はリュード……」
「リュード様ね」
「呼び捨てでいい。俺もそうするから」
「ええ」
「そろそろ行った方がいい」
「そうですね。ではよくお休みになって。また明日」
アリアが去った後、男――――リュードは頭を抱えた。
俺を助けてくれた女を見た時まさかと思った。
薄々と感じていたが……“アリア”だとは思いたくなかった。どうしても!
噂以上に心優しく暖かいあの女を苦しめる事なんか俺には出来ない!!

