スープを受け取るが、男は口にしようとしない。
「大丈夫です。毒など入っておりませんわ」
「……………。」
「貸して下さい」
アリアは男の手からスープを受け取り、一口食べた。
「ほら、大丈夫でしょう?あなたに手をかけるつもりなどございません。本気で私があなたのお命を奪おうとするのならスープに毒を入れるなんてせずに、あなたを見つけた時に奪っておりますよ」
「………………。」
アリアの言葉に納得した男はスープを口した。
「……………!!」
なんて、美味いんだ。こんなに美味いものを生まれて初めて食べた…………
男は夢中でスープを飲みながら、その悲しい瞳からは涙がこぼれ落ちた。
アリアは男の涙に気付いたが、気付いていないフリをした。
男の姿を見て声をかけてはいけない気がしたからだ。
皿が空になったのを見てアリアは嬉しかった。
「まだございますが、召し上がりますか?」
男は頷く。
アリアのスープのような心の篭った料理は男が一度も食べた事のない温かいものだった。

