アリアは男の正体に気付きながらも介抱した。
それは理屈では説明出来ないが、ボロボロに傷付いた男を見て何故か放っておく事も、報告する事も出来なかった。
もしあのまま放っておくか報告すれば間違いなく男は拷問にかけられ、背後にいる人物や機密を全て吐かされた挙句に殺されてしまうだろう。
王妃として一国民として今、アリアのしといる事は間違っているかもしれない。
この男は罪もない国民達を手に掛けたのかもしれないのだから。
分かっていても出来ない。
どうしても出来なかったのよ………
アリアの心は揺れていた。
この男を助けたい気持ちとジェイドや国民に対する罪悪感のような複雑な気持ち。
アリアは苦しい思いをしながら男の体を清潔な布で汚れを落とし、薬を塗り、包帯を巻いた。
手当が終わり、ベッドのシーツを清潔なものに取り替えて、埃が溜まった床を掃除して小屋全体を快適な状態にした。

