レイリーゼ行きの馬車にアリアは乗っていた。
アリアのレイリーゼ行きには条件があった。
その身ひとつで嫁に行かねばならないと言うのだ。
フローランからレイリーゼまでは馬車で約6日かかる。アリアには着替えすら持つ事を許可されなかった。
流石にアリアはジェイドに抗議をした。
「せめて、亡くなったおばあ様からいただいた形見のネックレスだけでも許して頂けませんか?」
「お前は俺の妻になると同時にレイリーゼの民になる。フローランのものは一切必要ない」
ジェイドの命令でアリアの必要なものは全て揃えてあるというが、突然決まった結婚。
王族に生まれ、アリアは政略結婚も覚悟していたのだが、あまりにも突然で家族、城の臣下や国民に別れの言葉を言う時間すら与えられなかった上に持って行きたいものもあった。レイリーゼにはアリアがフローランで17年間過ごした日々の思い出が詰まったものは何ひとつない。
夫になる男の冷たい言葉に深く傷付き絶望に打ちひしがれた。
アリアはたった一人、馬車の中で涙を流した。

