「お父様!いけないわ!」
「いいんだ。優しいお前のことだ。話せば自分の身を犠牲にすることなど分かりきっていた」
「お父様。私は良いのです。どうか娘の我が儘をお許し下さいませ」
「親子の最後の会話は終わりましたか?」
冷ややかな男の声が響いた。
「……はい」
「アリア!!」
「フィリップ王。私は貴殿の首を欲しいわけではありません。欲しいのは王女だけです」
「しかし!!」
「お父様。私が自分自身でジェイド様の元へ参ると決めたのです。ですから、どうか……お気になさらないで」
「アリア、お前は一度言い出したら聞かない。本当にいいのだな?」
「はい!」
「分かった。もう何も言わない。……ジェイド殿」
「はい」
「娘を宜しく頼みます。娘は……アリアは本当に心優しい良い娘です。どうか、どうか幸せにしてやって下さい!!決して不幸にしないと約束いただきたい!」
「ご心配には及びません。お任せ下さい」
「貴殿のそのお言葉、信じますぞ」
「はい。話も纏まりましたので王女……いや、妻を連れて国に帰ります」
「いくらなんでも、それは……」
「私は二年もの間、待ち続けた。これ以上待たせるおつもりで?」
「…………。」
「お父様……大丈夫ですわ。私は遠くから皆の幸せをお祈りしております」
そっと手を握り微笑む。その笑顔は今まで見た笑顔の中で一番、美しくて……
一番、悲しかった……

