ジェイドが遭難してから9日が経過した。
毎日毎日やって来ては怪我の手当てと食事の世話をしてくれるアリアにジェイドはすっかり気を許している。
だが互いに名乗る事はなかった。
一国の国王と王女という立場なら致し方ない。
だがアリアの纏う雰囲気や身に着けているものを見ると庶民ではない事はジェイドには分かっていた。
そして…………
「世話になった。ありがとう」
「どうしてですか?」
「遭難して何日も経過した。一日も早く戻らねばならん」
「ですが、足を……」
「体力は回復した。もう問題ない」
「あなたは大丈夫だとおっしゃいますが、私は心配ですわ」
「大丈夫だ。俺を探しているはずだから落ちてきた所に行けば合流できるはずだ」
「そうですか………」
「ああ。君には感謝している。ありがとう」
ジェイドは太い木の棒を使いながら歩いて行く、その後ろ姿をアリアはずっと見送った。

