これがジェイドとアリアの出会いだった。
アリアはこの時の事を覚えていない。
…………正確に言えばジェイドだと知らない。
何故なら戦争が長期間続いたため、ジェイドの髪は伸びて髭も生えていたので顔が分からなかったのである。
そんな怪しいジェイドに怯える事なく近付くアリア。
「どうかなさいましたの?」
「動けない。助けてもらえないだろうか」
「では人を呼んで参りますわ」
「それ以外の方法で頼む」
「ですが私一人では……」
「何でもいい。食べ物と薬をくれないか?」
「それでしたら大丈夫ですね。すぐに戻りますので、お待ち下さい。…………あっ」
走り出したアリアは一度戻って来た。
「お顔が汚れていますわ」
泥だらけだったジェイドの顔をハンカチで拭いてから走り出した。
ジェイドの胸に暖かいものが広がっていた。
食べ物と薬を持って現れたアリアは手際良く手当てをしていく。
食事を取ると少し眠くなって来た。
「大丈夫です。安心して下さい」
アリアの優しい声に瞼が重くなり………
眠ってしまった。
眠りの浅い彼が人前で眠くなるなど有り得ない事だった。
ジェイドの遅い初恋がやって来た日だった。

