「あぁっあ、また一つ歳取るのか」

「陽、親父くさい!!」

「うるせえ!!」

 どうして、誕生日が嬉しくないんだろ?

 自分がこの世に誕生した瞬間よ。

 それに、歳を取るって素敵じゃない。
 一歩ずつ大人になるって事なのに。

 あたしは、陽の誕生日が待ち遠しくて仕方ない。

 今隣で拗ねているのは、赤城 陽(あかぎ よう)

 そして、あたしは、川崎 凛子(かわさき りんこ)
 彼との関係を聞かれると、微妙。

 殆ど毎日一緒にいるけど、彼氏ではない。
 幼馴染みとも違う。

 友達っていうのかな?
 それも違う気がする。

 取り敢えず、今は楽。

 そう。
 それだわ。

 彼とは、ちょっと不思議な出逢いだったの。

 それは、霜の降りる紺碧の空の下だったね。

 あの時、捕まえてくれていなかったら、あたしは、きっとこの世界に存在出来なかったのかもしれない。

 考えるだけでゾッとする。

 忘れなきゃ。
 あの日から生まれ変わったんだから。

 それは、1年前のあの日の事──