「じゃ、また明日ね~」
美夏は、両手を高く左右に振って、一足先に路地を曲がっていった。
あたしも、それにつられて片手を大きく振った。
だけど、今話していた内容が思い出せない。
さっぱり、というほど。
「さて、やっと俺たちの時間、取り戻せたね」
急に変わった口調に、背筋が凍り付いた。
「何言ってるのよ」
それを悟られないように、軽く交わしたつもりだったんだけど。
「桜って、演技下手だね」
「悪ぅございましたね」
コイツは、エスパーか。
、と思うくらい心情を読み取られてしまう。
瑞希と二人になると素直な心は、何処かに置いてきぼりにされたみたいに、捻た言葉しか出てこない。