煙草を吹かし空を仰いでいる神楽。

白い煙と一緒に、彼の心も空に飛んで行ったように感じた。


「俺も柄じゃねぇよな」

ポツリ、と呟いた言葉に耳を傾けた。


「ベツレヘムの伝説、聞いたことあるか?」

「えっ!?」

クリスマスツリーにベツレヘムの星を付けた人に1年間幸せが訪れる。

っていう、あれかな?

何で、急にそんな事聞くんだろう。


「アンタに付けさせてやりてぇんだ」

「何を?」

「鈍くせえな」

どうやら、さっきのツリーの事みたい。

ツリーに違和感を感じたのは、有るべき星がまだ、飾られていなかったからだと分かった。

でも、どうしてあたしなの?


「樹(いつき)と約束しちまったからな」

何言ってるの!?
イツキはアンタでしょ?

あたしの頭に浮かんだハテナマークを、
ワシッ、と掴まれた。

「あぁ。
 それは今日だけの名前」

意味不明!!

もう、帰る!!

最初から信じられなかったけど、何もかもが信じられない。

少しの間だけでも、コイツなんかにドキドキして、損した気分。

本当は、神楽 満(みつる)だって。

やっぱり違う人だったんだね。

何で態々違う名前を名乗ったりしたんだろう?