“いい絵を描くなぁ、ってずっと思っていたの” 彼女の言葉が、スゥーっと耳に刻まれる。 嬉しい。純粋に、嬉しい。 誰かが私の知らない時に、私の絵を見てくれていた。 その事実が嬉しかった。 「…私、黒川香苗っていうの。」 『えっ??』 一瞬、耳を疑った。 だって、それはいつだか翔が呟いていた名前だったから。 …もしかして。 「ずっと声をかけられなくて… ごめんなさい。」