知らない。 こんな優しさ、知らない。 私なんか、顔でさえ覚えてなかったのに…。 私のことを影でみていてくれた。 私のことを気にしてくれた。 そんな風に思うと、なんだか心がくすぐったくて。 どこか温かいものが、私の胸にこみ上げてくるの。 「…早口??」 翔が慌てたような、戸惑ったような声を上げる。 それもそのはず、 私の目からは、 大粒の涙が零れていたんだ――…。