【やる気になったのは礼子ー1】





………







全ての話をヨネさんから
聞いた礼子。







あのしわくちゃな口から
10年前の事を
全て聞き入れた。







「うおおおぉ~~~!!

副社長~~~~!!
副社長~~~~!!」







隣で話を聞いていた
三山は、

あまりの事に
号泣している。







もちろん霊なので
ヨネさんは
気付いていない。







「うっうっ…」







礼子も涙を
ボロボロ流している。






こんな話を
聞かされちゃあ

誰だってこうなるハズだ






特に三山を知ってる分
ヨネさんの想いは
痛い程分かる。







が…







(うっうっ……

こんな話聞いてたら
お昼過ぎちゃった…

会社前にある
パン屋さんの
カレードーナッツ
きっと売り切れた…)







それが礼子の
涙の原因だった。







何てヤツだ。







「許せない!!!
金丸なんて許せない!」







怒りが
ふつふつと沸く礼子。







カレードーナッツの
恨みである。







「礼ちゃんや…
ありがとうそこまで
怒ってくれて…

もう頼るのはアンタしか
いないんだよ…

藤原さんは
アレから5年後に
病で倒れ亡くなって
しまった…

もうこの会社には
私を知るものはいない。

何を言っても
下っぱ雑用係の
この老いぼれの
言うことなど、
聞いてはくれない
だろう…」







そうか…

それで
わざわざ礼子のとこへ
頼みに来たのか…







もはや
今のヨネさんの力では

そこまでが限界であった