3限目の休み時間―――。

トボトボと、裏庭から教室へ帰る。

なんで裏庭にいたのかっていうのは―――・・・・・・。

「り、陸様っ!私と付き合って下さい!」

「好きですッ!」

「チョコ、受け取って下さい!」


女3人から呼び出されて、コクられていたから。


教室へ戻る俺の手には、しっかりとチョコ3個が握られている。

いらないって言ったのに、無理やり押し付けられた・・・・・・。


もうこれで、朝から数えて10人目。

女たちは、俺が杏と付き合っていることを知っているのに……呼び出すんだよな。

勘弁してクダサイ。

本気で早退しようか。
教室には、もう段ボール2箱分のチョコがある。

「どうやって持って帰るか……」

そんなことを考えながらA組の教室に入ると―――……。

……増えてるんですけど。

さっき教室を出て行く時よりも、段ボールに入っていたチョコの量が多くなっていた。


バレンタインなんて嫌いだ。

全国の菓子メーカーを呪うぞ。

なんでこんな日を作ったんだよ!


ため息をつきながら、席に着いた俺に、さらに不幸が襲い掛かる。


「うっわ~お前いいな~!」

「だろっ?マジ嬉しいんだけど!」

「なあなあ!ホントに手作り?」

「当ったり前だろ!」

A組の教室の前の廊下を数人の男たちグループが通った。

デカい声が、教室奥にいる俺のところまで聞こえてくる。

うっせーな・・・・・・静かにしろよ。

こっちは落ち込んでんだよ!


イライラが出てきた瞬間。


「あの神崎杏樹ちゃんからチョコをもらえるなんて、お前うらやましいよ!」


ひとりの男が叫ぶように言った。