樹里が、神崎樹里になってから、早15年近く。

“杏樹”という娘も授かった。


中学生の娘は、樹里の中学時代にそっくりで。

ただひとつ違うのは───……。


“スカートは膝下、分厚いメガネ、長いみつ編みの地味子”であること。


容姿を隠して、男達から身を護るためにこうしている。


「杏樹に彼氏なんてまだまだいらない」


それが俺の最近の口癖である。


しかし、1年半後に現れた男に、多大なショックを受けることになるのだが───……それはまた別の話。



──コンコン


「渉〜? お茶にしよう?」


書斎の扉を開けて入って来たのは、妻の樹里。


「あぁ、今行くよ」


イスから立ち上がり、彼女の元へと向かう。