おいおい……樹里。

お前、誰にでも抱き着くのか?


「樹里、離れろ」

「イヤ。ちょっとで良いから、昨日みたいに抱きしめて」

「……」


ハァ〜……困った姫様だ。

「もう4限目始まってるし、10分だけだからな」

「……10分だけ?」

「あぁ」


そう言って、コイツの華奢な体を抱きしめた。


なぜ10分なのかは、理性の限界がその時間だから。

それ以上、抱きしめてたら何をするかわかんねぇ。


「……河西梨香ちゃん、カワイイよね」

「は?」

「1年のNo.1美少女だもんね……」


コイツ……何が言いたいんだ?


「俺は……河西より、樹里の方がカワイイと思う」

「えっ……」


ポロっと出た本音。

しっかりと聞いていた樹里が、なんだか嬉しそうに見えた。