鈴宮のことを無視して、樹里に話しかける。


「樹里、チョーク貸せよ」

「えっ……うん」


チョークを受け取り、黒板に書かれた問題を見た。


ふーん。これか。


「……楽勝」

「わ、渉……?」


心配そうな樹里に、ニッと笑って見せる。

そして、一気に解答を書き始めた。


1分後───……。


「出来ました」

「……ッッ……正解だ」


ワッとクラスから歓声が起こる。


悔しそうな鈴宮に近づいて、一言告げた。


「俺の大事な樹里に手ェ出そうもんなら、どんな手を使ってでも先生のこと消すよ?」

「ヒッ……!」


低すぎる俺の声に、真っ青になる鈴宮。

最後に呪うように睨み付けて、自分の席に戻ろうとした瞬間。


「わ、渉ッ……」


キュッと後ろから制服のシャツを掴まれる。


「ん? どうした?」


鈴宮とは真逆の柔らかく微笑んで、樹里を見た。


「あ、ありがと……」

「気にすんな。今朝の礼だよ」


俯いてる樹里の頭を優しくポンポンと撫でる。


その時、ちょうど授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。

鈴宮が俺から逃げるようにして、教室を出ていったのは言うまでもない。