なぜなら、彼はしっかりと彼女と手を繋いでいるから。

女嫌いの彼が女性と恋人繋ぎ?

私の知る中ではありえないこと。

だって、署内のどんな美人や可愛い子がアプローチしても見向きもしなかった。

あたしはそれを見て来たから、彼に気があるようには見えないように気を配って今までの関係を作って来たのだ。

年下なのに男らしくて。

いつでも堂々とした姿がカッコよくて。

たまにしか見せない笑顔がかなりツボ。


高瀬くんが好きな私にとっては、この状況は心穏やかではない。


「誰よ、その女は」


エレベーターを待っているのか、ふたりは私に背を向けている。

だから女の顔は見えない。

わかることは、この署内どこかの婦警ってこと。


まさか、同じ署内の女に高瀬くんを取られるなんて!

あたしの今までの努力が水の泡じゃない!

なんのために好きじゃないふりしてきたのよ。



その時、高瀬くんが彼女を引き寄せてキスをした。

軽いものだったけど、その空気は恋人同士そのもの。