でもこれでも随分マシになった方だ。

大学時代なんて同い年なのに、アイツは絶対に敬語だった。

アイツの丁寧な物言いは仕事でも活かされてるし、それがアイツらしいんだけど。

こう付き合って数年経つというのに、まだ敬語使われんのはなんか腑に落ちないというかなんというか。

気に入らないんだな。



今でこそ敬語は少なくなってタメ口が増えてきた。

けど……一体いつになったら、アイツは俺のことを名前で呼ぶようになるんだろうか。



『それでですね! 今度……んのとこに……からね!』

「は? なんて言った?」



考え事をしていたら、アイツの話を聞いていなかったようで。

途切れ途切れでしかわからない。

もう一度話すように催促する。



『ほら~っ! やっぱり聞いてないじゃないですか』

「……」

『もういいもん、高瀬くんには教えてあげない!』

「だからなんて言ったんだ?」

『しーらないっ』

「おい茅那……」

『じゃあね、お仕事頑張って』



その言葉を最後に通話が切れた。

何だったんだアイツ。


スマホの画面を見つめても答えなんか出るわけがなく。


「メシ行くか」


ポケットへスマホを入れて、エレベーターへ歩き出す。