「そういや蓮ちゃん」

「………なんですか」


不満そうな表情だが、俺の話に乗ってくれるようだ。


「お前って煙草吸わねーよな?」

「……そうですね」


突拍子もない質問にちょっと驚いたようだが、すぐに返ってくる。


「ここにいるヤツら……結構吸う人多いのに、蓮ちゃん吸ってるとこ見たことないな~って思ってさ」


男女比で考えたら男が多い部署。

日々ストレスは溜まるし、煙草吸ってホッとするヤツも多いんだ。

だが、この高瀬は一切吸わないから……。


「家族でも友人でも吸う人がいなかったんで、馴染みがないんですよ。それに」

「それに?」

「僕が吸うと困る人いるんで」


カリカリとペンを走らせながら答える高瀬。

困る人がいる?

あぁ……呼吸器系で弱い人がいるって意味?

喘息持ってるとかさ。


「へぇ~そうなの?」

「はい」

「じゃあさ、次の質問ね!」

「小笠原さん、報告書まだあるんですよね。今日中に終わりませんよ」

「いーのいーの、この煙草吸い終るまでだから!」


この際、色んな事を高瀬に聞いちゃおう。

女性職員たちが気になっていること質問してやろう。

警務課の女の子たちが高瀬のこと聞きだしてくれって言ってたんだよな。


「酒飲める方?」

「まぁ、それなりに」

「休みの日って何してんの?」

「別に普通ですよ」

「じゃあさ、彼女いる?」

「……」



最後の質問に、蓮ちゃんは無言だ。