すると。


「まーいいか……手放さなければいいわけだし」


私の顔を見て、フッとやわらかく笑った。

色々と疑問はあるけど、さっきまで怖い顔していた高瀬くんがいつもの彼に戻ったならいいや。

そう思うと私も自然と笑みがこぼれて来た時……。


「え、ひゃあっ……た、高瀬くん!?」


手を引っ張られて、彼を背にして足の間に座らされた。

すぐに高瀬くんの両腕が私の身体にまわされ、左肩に彼の顎が乗ってくる。

突然の行動にドキドキが止まらず、身体が硬直していると高瀬くんは笑った。


「なに緊張してんだよ、いつも家じゃしてることだろ」

「そ、それは家だからです! ここ外だし、海だし……誰か見てるかも」

「誰もいねーよ」


たしかに、人気はない場所だと思うけども。

まわりには岩場があって、ここら辺で遊ぶ人はほとんどいないだろう。

いたとしても、私たちのことは岩場の陰で見えないだろうし。


「高瀬くん、今日は友達設定ってこと忘れてないですよね?」

「忘れてない。でもここには誰もいねーし」


ケロッと言うけど、本当かな? だったら、あんなセリフ女の子たちに向かって言わないと思うんだけど。


「茅那―……お前、誰に見せるためにこんな格好してきた?」

「え、いや。別にそんなつもりは……」


ゆるめのニットとショーパンにサンダル。

髪は暑いからと軽く巻いてからポニーテールにしている。

動きやすさを考えて選んだつもりだし、特に意図はなかったのに。


「男の多い場所に、そんな格好してくんな。目ぇつけられるぞ」

「そんなことないと思いますけど……」

「あるんだよ。お前ただでさえスタイルいいんだから気にしろ」


そう言って私を抱きしめる。