付き合って半年。
この関係を知ってるのは、陸や杏樹をはじめ……いつも集まる仲間たちだけ。
茅那のマネージャーもBKN48メンバーも、業界関係者も知らない。
人気絶頂の茅那に交際相手がいると知られたら……まず、アイツの仕事に影響が出るだろう。
アイドル=みんなのもの。
という考えが強い世界だ、バレた時点で必ず別れさせられる。
せめて茅那がグループを卒業するまでは隠し通さなければならない。
それで、寂しい思いはさせてると思うが……杏樹の協力もあり、ふたりで人前に出ても“あの茅那”とは気付かれない。
現に、この至近距離で話していても誰一人茅那の正体には気づかない。
このままあと数年付き合っていければいいと思うが。
そこまで考えたところで。
「なー高瀬? お前って、彼女いたことあんの?」
近藤がサラッと質問してきた。
その言葉に、ヤツらの視線が一気に俺へと集まる。
彼女か。
茅那を除いて……前の女を挙げるとすれば。
杏樹は除外だな、あれは付き合った内に入らねえ……。
「……あるよ。そんかわり顔も見たくないほど忘れたいヤツ……」
思い出したひとりの女の姿に、吐き気がしてきた。
もう二度と会うことはねーだろうけど……顔を思い出すだけで気分悪い。
『れーんっ!』という名前を呼ぶ声さえ、聴きたくもない女だった。
「いたのか? 意外だなー!」
近藤たちは盛りあがっていたが、そんなの耳に入らない。
そんなことはどうでもいいんだが。
「茅那……おせーな……」
ビールを取りに行った茅那が戻らない。
そんなに離れた場所にあるわけでも、大量の缶を持ってくるわけでもない。
すぐに戻ってくると思っていたのに。
「どこ行くんだよ高瀬」
席を立った俺に対してヤツらが聞いてくる。
「茅那探してくる」
そう一言伝えて、その場を離れた。


