だけど、その発言は効果抜群で。

まわりにいた女の子たちは……ホッとした表情になってる。

私が彼女ではないと高瀬くんの口から直接言ったから。


「なんだー彼女じゃねーの? ま、いいや! キミも今日は楽しんでいってね」


目の前に立っていた男性のひとりからポンッと肩を軽く叩かれた。


「あ、はい。ありがとうございます」


私が会釈すると、あれだけうじゃうじゃといた男女は散らばっていく。

みんな準備に戻ったんだ。


「えっと……何から手伝えばいいですか?」


隣に立っている高瀬くんに向けて問いかけたのだけど。

え? な、なんで不機嫌なの!?

見上げた彼の顔は八岐大蛇になっていた。


「高瀬くん……?」


彼の着ているシャツを指先でクイクイッと引っ張ってみる。


「あ? 茅那か……どうした?」


ハッと意識を引き戻して私を見た時には、もういつもの優しい高瀬くんだった。


「それはこっちのセリフです。眉間にシワ寄ってますよ」

「そうか? 悪い……なんでもねーよ、気にすんな」


そう言って、彼はポンと大きな手を頭の上に置いた。

クシャッと撫でられた髪から温もりが伝わってくる。


いつまで経っても、高瀬くんのなにげない仕草にドキドキするなぁ……たぶん、ずっと。