――茅那side――


「茅那ちゃーーん! こっちこっち!」


周囲の視線をひしひしと自分の身体で受け止めつつ、手招きで呼ばれた方へ走る。

まだ6月だというのにジリジリと照りつけるような日差しに参ってしまいそう。

半袖から覗く腕がじわじわと太陽に焼かれていく気がした。

近くにある鉄板や金網の熱といい勝負だ。


「えっと頼まれていたビールとコップです」


両手に抱えていたものを目の前にいる男性に渡す。


「ごめんね、ありがとー! 茅那ちゃんも楽しんでいってね?」
「はい」


返事をすると、その彼は私が持ってきたビールを周囲の男性陣に配り始めた。


ここは、住み慣れた街から少し離れたところにあるビーチに隣接されたBBQ会場。

道具が一式揃っていて、炭と材料を持ち込めば、簡単にBBQが出来ちゃうというかなりいい場所。

だけど、今日の私は仕事ではない。

2週間ぶりにできたオフの日なのだ。

そして、まわりにいる人たちは……仕事で一緒になるスタッフさんたちではなく、大学生。


それも……高瀬くんが入っている剣道サークルの皆さん。

剣道サークルのBBQに参加しているのだ。


大学生でもない私が、どうして参加しているのかというと、ことの始まりは一週間前にさかのぼる。