その灯りは、懐中電灯などではなく……火。
杏のまわりを囲むように、いくつもの火の玉が浮いている。
そして、杏自身の右手の手の平にも……真っ赤な炎が浮かび上がっていた。
それで見えた表情は、声さえ落ち着いているものの怒りしかない。
「お、お前はっ……か、神崎っ!!」
炎によって杏の顔が見えたらしい斉木は、愕然とした表情になる。
「なんで陰陽師がっ……!」
そう言う斉木に、杏はフッと鼻で笑って返した。
「アンタの悪行、ウチの一族が放って置くとでも? 廃墟になった病院が肝試しで有名になった頃から、次々と死人が出ていると報告が来た。それで、現状を見に来たら……まさにビンゴ。でも、今夜のターゲットが陸とは、あたしにケンカ売ったね?」
弄ぶ(もてあそぶ)ように手の平に浮かぶ炎を操る彼女。
炎の明るさで見える顔は、斉木を睨みつけている。
こんなに怒った杏、久々だ。
「血吸いの斉木だっけ? 今日からは人間じゃなく、地獄の血を吸っていきなっ!」
そう言った瞬間。
彼女の周囲を取り囲んでいた炎が、一斉に斉木へ襲いかかった。


