チラッと視線を向けると、やつらは気が付いたようで。


「なー滝本、神崎さんなんで来なかったんだ?」

「彼氏のお前が来るのに、なぁ?」

「もしかして、怖いものダメとか?」

「あ、ありえるっ! 神崎さん怖がりそうだもんな!」


次々と男たちから飛んでくる質問。

いや、アイツ……遊園地とかじゃ、自分から喜んでお化け屋敷入っていくけど。

つーか、杏が怖がり?

ありえない。そんなんじゃ、仕事できねーだろーが。


「杏は、用事があるから来られないって」


男たちに一言返すと、残念だと言わんばかりに肩を落とした。

そーなんだよな。

杏のヤツ、『へぇー肝試し? うーん、パスッ! あたし、用事あるから』とあっさり言って帰った。


廃墟ということもあり、俺らが持参した懐中電灯以外の明かりはない。

10組のペアが出来たので、ひと組ずつ病院の中へと入る。

俺と胡桃って女は、くじ引きで最後になった。


ルートは、簡単。


ふたりにひとつの懐中電灯を持って5階ある病院内を一周してくること。

幹事が最初に行って、病院の最上階にある講堂の一角に、ノートとペンを置いてくる予定だ。

それにペアの名前を書きこめば、帰ってきてよいとなる。

俺は最後のペアなんで、そのノートを持ちかえる役目があった。