教室の入り口のドアのところにいる。

表は黒で裏地は赤のマントを羽織り、蝶ネクタイを白シャツの上から付けていた。

下は黒のミニスカで、同じ色のハイソックスを履いて……。

だが、そんな恰好をしているのは朝比奈だけではなく。

先程まで教室に居た女たちのほとんどが、様々な仮装をしていた。

そすして、今日が何の日なのかを思い出す。


「10月31日だから、ハロウィーンか」


諸聖人の祝日の前夜の祭りだ。

秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す古代ケルト人の祭りが起源となっている。

主にアメリカで行われるそうだが、カボチャの提灯などを飾り、仮装した子供が近所の家々からお菓子をもらう。



「お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうよー」


女たちがそういって、男たちの元へと歩み寄っていく。

ぞろぞろと教室内に女たちが入って来る中、その集団の最後尾に、よく知った姿を見つけた。



頭には、つばが広くて、三角に先端がとがって曲がっている帽子。


太ももの半分くらいの丈の長さで、レースが随所にあしらわれており、胸元は紐で編み上げたデザインのワンピース。

膝より少し上までの黒のハイソックスを履いて、足元はミドル丈のブーツ。

手には長めのステッキ。


それは、魔女の格好をした杏だった。