大学1年の秋が舞台です。
―陸side―
日中の気温もだいぶ下がり、そろそろ本格的な秋がやって来そうな、とある平日の午後。
「では、今日はここまで」
チャイムと同時に講義が終了し、教室を出て行く講師。
俺は机の上に広げたテキスト類をまとめ、出していた筆記用具をペンケースの中へと戻した。
今日は金曜日。
特に急ぎの仕事はない……杏と街でブラブラしてから帰るか。
杏だって、『用事はないよ』って言ってたし。
トートの中にテキストをしまい、俺の左側にある通路を挟んだ席にいる彼女を見た。
しかし。
「は? 杏?」
さっきまで。
講義が終了する直前まで、そこにいたのに。
杏は……俺の隣にはいなかった。
たしか今日は……朝比奈と一緒に座っていたと思う。
ふたりでキャッキャと笑いながら、受講していた。
その朝比奈さえもいない。
広い教室内を見渡すが、ふたりの姿はどこにもなかった。
服のポケットから携帯を取り出し、杏の電話番号を探す。
発信ボタンを押して耳にあてるが―――。
『お客様のおかけになった電話番号は現在電話の届かない場所に―――……』
女のアナウンスが流れるのみだった。
どこに行った?
携帯を耳から離し、教室内を再度見渡しながら考える。
その時に、教室内には……女がいないことに気が付いた。
―陸side―
日中の気温もだいぶ下がり、そろそろ本格的な秋がやって来そうな、とある平日の午後。
「では、今日はここまで」
チャイムと同時に講義が終了し、教室を出て行く講師。
俺は机の上に広げたテキスト類をまとめ、出していた筆記用具をペンケースの中へと戻した。
今日は金曜日。
特に急ぎの仕事はない……杏と街でブラブラしてから帰るか。
杏だって、『用事はないよ』って言ってたし。
トートの中にテキストをしまい、俺の左側にある通路を挟んだ席にいる彼女を見た。
しかし。
「は? 杏?」
さっきまで。
講義が終了する直前まで、そこにいたのに。
杏は……俺の隣にはいなかった。
たしか今日は……朝比奈と一緒に座っていたと思う。
ふたりでキャッキャと笑いながら、受講していた。
その朝比奈さえもいない。
広い教室内を見渡すが、ふたりの姿はどこにもなかった。
服のポケットから携帯を取り出し、杏の電話番号を探す。
発信ボタンを押して耳にあてるが―――。
『お客様のおかけになった電話番号は現在電話の届かない場所に―――……』
女のアナウンスが流れるのみだった。
どこに行った?
携帯を耳から離し、教室内を再度見渡しながら考える。
その時に、教室内には……女がいないことに気が付いた。