社長は、北原さんを睨みつけていたんだけど彼女に視線を向けた。
「で。なんでお前がここにいるんだ」
無言を返す彼女。
「もう一度、聞くぞ。なんでお前が、会社にいる」
「……いや、あの。書類を忘れたって聞いて……届けに」
「あ゛!?」
ボソボソと返す彼女に、一段と低い声を出す社長。
ウチの社長って、こんなに怖い人だったの?
見ていることしかできなくて、キョロキョロと視線だけが行き来する。
社長と女性の様子を見かねた北原さんが、話に加わった。
「社長、申し訳ありません! 書類を忘れたことをご連絡したんです。そしたら杏樹様自らご持参いただいて」
「俺は、実家から遣いをよこせって言ったよな? なんでコイツが持ってくるんだ」
「そ、それは……」
そう言って、彼女を睨む社長。
「だって外に出たかったんだもの。最近、家にこもってばかりだから……ちょっとは運動もしなきゃダメだし」
「運動? お前、家からここまでどうやって来たんだ」
「え。電車だけど。最寄駅で降りてからは徒歩。久しぶりに電車乗ったけど、やっぱり人多いね」
サラッと答えた彼女に、北原さんも社長も目を見開く。


