地味子の秘密*番外編*


今、26歳だっけ?

そんなことを考えていると、社長が一言告げた。


「頭を上げてくれ」


それは周囲にいる社員たちに対してで、ゆっくりと私は顔を上げる。

だが、視界に入って来た超イケメンの社長に、ポーッと見とれそうになる。

だ、ダメダメ! この人は社長よ!!

少し自分を戒め、気持ちを切り替えた。

そして、私の一歩前にいた黒髪の彼女と北原さんに視線を移す。


「え?」


驚くことに、目の前にいるふたりは、社長を見てはいなかった。

彼に背中を向けて……ふたりで背中を丸めて縮こまっている。

彼らには見えていないと思うけど、背を向けている社長の眉間にかなりのシワ。

怒っているよね?と思ってチラッと社長を見上げた。


その瞬間。



「てめーら、こっち向け。1秒以内に」



地獄の底から、というくらいにものすごく低い声で社長が言葉を吐き出す。

その暴言に、ふたりはビクッと体を揺らして、ぎこちなく振りかえった。


「あ、しゃ、ちょう……なんでこちらに」

ギロッと、一般社員には見せたことのない表情で彼らを睨みつける社長に、言葉が続かない北原さん。


「お前が“吉川”という女性に呼び出されたと聞いてな」

「え!」

「吉川なんて名乗ってお前を呼び出すのは、そこにいるヤツしかいないからな。おかしいと思って見に来たんだよ」


額には冷や汗、顔色は悪い。

エントランス内はピリピリした空気。

話の内容から、女性が言った吉川って苗字は偽名ってことかな?

ウソをついた黒髪の彼女も居心地悪そう……。