吉川?
北原さんの家族? いや、彼は独身だって聞くし。
本当に誰なんだろうって、思っているうちに受付嬢は、北原さんに電話をかけていて。
「ここでお待ちください。すぐに北原が参ります」
そう返してきた。
え。彼女が届けるんじゃなくて、北原さんが取りにくるの?
あの、社長から絶大な信頼を寄せられている彼が。
若いのに仕事ができる優秀な人で、重役たちも可愛がっていると有名な彼が。
「そうですか。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げてお礼を言う黒髪の彼女は、フッとエレベーターのある方向を見た。
会社への道を知らなくても、エントランス内の構図は知っているのか。
フーンと感心した、その時だった。
効果音をつけるなら、ダダダダダダダダダダダダ!だろうか。
それくらい必死な形相で、こちらに向かって走ってくる男性。
「あ、北原さんだ」
ポツリと彼の姿を確認した彼女が呟く。
その言葉と同時くらいに、社長専属秘書の彼が黒髪の彼女の前に着いた。
「も、申し訳ありません!!」
着きなり、頭を下げる北原さん。
え?
周囲にいた社員たちが一斉に目を剥いた。


