「いらっしゃいませ。ご用件はなんでしょうか」
会社の広いエントランスにいる受付嬢が作った笑顔を張り付けて、決まり文句を放つ。
黒髪の美女と一緒に受付まで来た私は、隣に立っている彼女を見つめた。
「えっと……誰を呼べばいいんだっけ」
一瞬ボソッと呟いて戸惑った彼女だったけど、驚きの人物名を挙げる。
「秘書課の、北原さんをお願いします」
潤った唇から発せられた名前に、受付嬢全員が目を見開いた。
「秘書課の北原ですか?」
「はい」
迷うことなく言う彼女に、受付嬢たちはお互いに顔を合わせる。
それもそのはず。
秘書課の北原さんと言えば、社内では有名。
なんでかって?
だって彼は……私たちの会社の社長専属秘書だから。
ちょっと童顔だけど、かなりのイケメン。
秘書課をまとめるトップの人物でもある。
北原さんを呼び出すなんて……彼女は、いったい誰なんだろう?
さっき届け物があるって言ってたわよね。
北原さんに届け物ってことは、会社にとって重要な書類とかを持つことができるそれなりに地位のある人だ。
ジーッと黒髪の女性を見ていたら、受付嬢が再度問いかけてきた。
「アポは取ってありますか?」
「あ、はい」
「では、お名前は?」
「た……あ、吉川です」
一度何か言いかけたけど、彼女は『吉川』と名乗った。


