自分の手に、仕事関係のモノを渡せって言っているようだった。

その目は何の感情もなくて冷たい。



そばにある大きなトートバックに、ノロノロと手を伸ばす。


この中には、今度発売する曲のCDと歌詞、バラエティー番組の台本、その他の番組のスケジュールが入ったファイル。


これまで歌ってきた曲の入った音楽プレーヤーや、ダンス練習に使う服、タオル。


ファンの人たちからもらったファンレター。


なにより、私のことを応援してくれる家族がくれたお守りやメッセージカード。



いつもの仕事に必要なものがいっぱい詰まっていた。



これを、渡して……燃やしちゃうの?

ゴミにしちゃうの?



「……茅那。渡せ」


低い声が聞こえてきて、視線を上げる。


見上げて合った彼の目は……真剣だった。




「芸能人辞めたんなら、いらねーだろ?」



そう。私は社長に辞めたいって言った。